トロピカル〜ジュ!プリキュア 感想
終わったので感想を書きます。
始めに
非常に面白かった。
チーム5人全員の活躍に夢中になれた久々のシリーズとなった。
あまりに好き過ぎるのでベタ褒めはせず、冷静にこの作品を振り返ってみたい。
良かったところ
① テーマの一貫性
誰にでも刺さるテーマであり、子供達はもちろんの事大人も共感できる
「今一番やりたいこと」
というテーマを最後まで貫き通せたのは良かった。
まなつの「いつまでも『今一番やりたいこと』に全力投球し、尊重する」、さんごの「自分の『好き』に向き合う」、みのりの「新たなことに挑戦する」、あすかの「もう一度仲間を信じてみる」、そしてローラの「本当に『今一番やりたいこと』を貫く」。
それぞれが己のテーマを持ち、「トロピカる部」と「プリキュア」での活動を通じて新しい自分を得ていくストーリーを1年で描き切った。
最終決戦で敵ながらもプリキュアを助けたいエルダにこの台詞を言わせる下りも良い。
敵の話題となったのでちょっとここで余談だが、記憶を失った2人が再開のきっかけを掴むトリックがとても巧妙で面白かった。
まなつとローラ再会のための鍵の一つとなったのはまさかの後回し三幹部であり、
「人間界とグランオーシャンの者ではないので記憶を消されない」
という記憶消去装置の盲点を突くやり方は、三幹部に最後まで見せ場を作るという意味でも非常に巧かった。
やはり、身近で考えやすいテーマを据える方が話がキレイにまとまるのでプリキュアに合っているのかもしれない。
② ノリの一貫性
テーマに加えて、ノリの良さを最後まで貫き通せたのも好印象。
2021年も結局一年を通してコロナ禍による鬱屈としたムードは拭えず、それでも楽しんで見てもらえる事を念頭に置かれたこの作品は、OPをご覧になってもお分かりのように明るい「陽」の雰囲気をこれでもかと押し出した作風。
その心意気は絵コンテや演出に大地丙太郎監督を起用してきた辺り「本気」である様子が放送開始当初より匂わせていた。
これで途中息切れしようものなら・・・・・・と若干心配になったが最終回を終えた今、そんな心配は杞憂であった。
また、放送中断の可能性を踏まえたのか良く言えば常夏、少々悪く言えば季節感の薄い舞台設定が築かれていたが、12月になっても長袖へ衣替えしていた程度で冬に関わるイベントがほとんど描かれなかった程の徹底ぶりなのには驚いた。
ヒープリに続いて「これでは物足りない」とする意見も見られそうだが、こればっかりは時勢が時勢なのでしょうがない。
途中からキャラが崩壊しつつあった(元からこういう性格だった?)みのりや33話の10本立て回、44話の「スーパートロピカルパラダイス」辺りは一周回って悪ノリに片足を突っ込んでいたレベルであったが、あのような演出が許されたのもハイテンションを貫き通したトロプリだからこそ成せた技、といったところか。
最終回もローラとの別れと再会を主題とした感動的なエピソードでありつつも、「トロプリに涙は似合わない」と言わんばかりにギャグを散りばめ、結果としてさっぱり晴れやかなお話に。
第1話初見時のテンションで最終回まで見られたのは、ひとえにテーマとノリを一貫させたからに尽きるだろう。
それにしても、犬のフン踏んで終わるプリキュアは後にも先にもトロプリだけでしょ
気になったところ
① 一部のキャラクターの扱い方
まずは、さんごから。
あの5人の中で動かし方が一番難しい立ち位置にあったように思う。トロプリのノリに任せてさんごの見せ場を作ればたちまちキャラ崩壊に繋がっていただろう。
かといってさんごがこの物語に不要だったかと言うとそのようなことは決して無く、むしろ南乃島から出てきたまなつにとって憧れの同級生として登場しなければこの物語は始まりすらしなかったと考えると不可欠のキャラクターであった。
コーラルとしてもペケバリアは戦闘に無くてはならない防御技であり、トロプリチームのタンク役として大活躍。存分に見せ場はあったのだ。
さんご個人回自体は非常にキレイな形で納める事ができたと思う。しかし、この独特な作風であるトロプリにおいて「涼村さんご」というキャラクターはあまりにも「模範的プリキュア」のソレであった。これがこの作品においてさんごの印象が薄く見える大きな原因になったのかもしれない。
幸いさんごの女児人気は上々だったようで、Pretty Holicシリーズも好評だったのかデパプリでも商品展開が続いていく模様。
さんごは色んな意味でプリキュアを振り回し、かつ振り回されもしたキャラクターだった。
お次に触れるべきはくるるん。
作中では女王様やローラのペットというポジションで登場し、基本的に何もしない。何かしてるなと思えば、部室で寝てるだけ、貝がらクッキーを食べてるだけ、ボールで遊んでるだけ。
御存じの通り今年のプリキュアは今までの妖精の役目をローラが兼任していた。元々は女王様のペットで「おつかい」の為に人間界へやって来たくるるんは「ただそこにいるだけ」の存在であり、この姿勢は最終回を迎えても遂に崩れる事は無かった。
デザイン自体は非常に出来が良く、大友からは若干のミーム的要素を含みつつも根強い人気があった。作中では特異な存在感を中々活かし切れない妖精に終わってしまったのが残念なところである。
② バックグラウンドの弱さ
ノリで押し切るにも功罪というものがあり、今までは「功」の部分に注目したが今度は「罪」の部分である。
というのも、物語のバックグラウンドが何とも弱い。
そもそもグランオーシャンは「後回し軍団」の誰に襲撃されたのか?
グランオーシャンでも人魚族と妖精族(くるるん族も?)の違いは?
「愚者の棺」とは結局何だったのか?
なぜ「破壊の魔女」が生まれたのか?
・・・・・・挙げればキリが無いが、トロプリに関してはこういった謎に一々ツッコミを入れる行為自体がもう野暮なのであろう。
そう!
重箱の隅をつつくようなツッコミは野暮で無粋!
③ 作画
ワンピースやダイの大冒険、おしりたんていにリソースが持っていかれているという事なのだろうか、今年は海外勢の活躍が目立った。他にも作監4人体制とか。
タナカリオン演出回や最終決戦等、目を見張る作画演出もあったが、ここ数年のプリキュアの中では各話ごとの絵に良くも悪くも差が出やすいシリーズだったように感じた。
映画でもクライマックスシーンでの作画難を指摘する声は多かった。子供達が楽しく見られればそれに越したことは無いのだが、作画の具合で東映のリソースの割き方が垣間見えたような1年となった。
最後に
かくして終わりを迎えたトロプリだが、一言で言ってしまえば「日常系プリキュア」の一種だったと言ったところだろうか。プリキュアとしての活動はもとより、どちらかと言えば物語の主軸は「トロピカる部」で成長していく5人の物語であった。過去シリーズの中では(作風のベクトルは違えど)まほプリに近い雰囲気がある。
「王道的プリキュアらしさ」を求めている人にはトロプリはイマイチかもしれない。また、日常を主軸に置いていたからこそ5人のキャラクターそのものを好きになれなければ1年通して見続けるという事も大変であったかもしれない。
しかし、トロプリが伝えたかった「今一番やりたいことをやる」というテーマは、間違いなく前途洋々な小さな子供達に向けられていたメッセージなのである。どれだけはっちゃけていてもその目線は常に子供達を意識していたという事は紛うことなき事実なのである。
このテーマに1年間向き合い続け、キレイで爽やかにまとめた傑作であったに違いない、最後にこれだけ声を大にして主張させてもらったところで、この記事の締めとしたい。
さて、来週からはいよいよデリシャスパーティ♡プリキュアがスタート。
次回のテーマは「ごはん」。今度はどのような切り口でこのテーマに臨むのか、非常に楽しみである。
そして最後に、
製作スタッフの皆さん
声優陣の皆さん
バンダイ等グッズ担当の皆さん
今年も楽しくトロピカった作品を、本当にありがとうございました。